京都市北西部(北区)に「衣笠山(きぬがさやま)」という山があります。標高200m程のこの山は「衣掛(きぬかけ)山」とも呼ばれます。平安時代、第59代宇多天皇が真夏であるにもかかわらず雪を見たいと仰せになったため、山に白絹を掛けたという故事が山名の由来。
その山裾に沿って金閣寺、龍安寺、仁和寺という3つの世界遺産を結ぶ道路が「きぬかけの路」と呼ばれる観光道路。今回紹介する「京都府立堂本印象美術館」は、「きぬかけの路」沿いの金閣寺と龍安寺の中ほどに佇む美術館です。
2025年3月30日まで、京都きものパスポートを見せると入館料が無料に。
伝統の日本画からアバンギャルドな抽象画、工芸まで。異能の芸術家・堂本印象
JR京都駅から京都市バスまたはJRバスに乗り「立命館大学前」で下車すると、白壁に抽象的なレリーフで装飾された、ひときわ異彩を放つ白亜の建物が目に飛び込んできます。日本画家・堂本印象(以下、印象)が自分の作品を展示するために自らデザインした美術館。開館は1966(昭和41)年。印象の死後1991(平成3)年に京都府に寄贈され翌年「京都府立堂本印象美術館」として開館しました。2025年は印象没後50年にあたります。
美術館の外観
大正から昭和にかけて活躍した印象は、1891(明治24)年京都市生まれ。織物の図案描きを経て、大正7年に日本画家を志し京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学。以来、帝展(帝国美術院展覧会)での特選や帝国美術院賞受賞、絵画専門学校の教授や私塾の主宰者として多くの後進を育成するなど京都画壇の中心的存在として活躍。1961(昭和36)年には文化勲章を受章しています。
開館当初 昭和41年(1966)頃
伝統的な日本画を起点とした印象は、その後、日本画には見られない鮮やかな色彩や抽象表現を作品の中に取り込み、自らの画風を変遷させていきます。その画才は絵画だけに留まらず、陶器や漆器などの工芸、彫刻、金工、ガラス絵など多岐に及び、それらが同一人物によるものとは思えないほど多彩な作品を世に出しています。
アートが百花繚乱の印象ワールド
「京都府立堂本印象美術館」は、ユニークな外観の建物をはじめ館内の案内板、ドアノブなどのインテリア、休憩用に置かれた椅子にいたるまで、すべて印象がデザインしたもの。「本館」「新館」「サロン」「庭園」で構成され、現在およそ2600点の作品を所蔵しています。
エントランスホールのステンドグラス
◆見どころ、写真映えスポット案内
<エントランスホールのステンドグラス>
入口を入るとホール中央のステンドグラス「蒐核(しゅうかく)」が迎えてくれます。抽象画風の作品で、よく見ると折り紙やデパートの包装紙なども画材に使われています。
受付側から見たエントランスホールのステンドグラス「蒐核」
2階にあるステンドグラスは、福井地方裁判所のエントランスホールを飾る「楽園(らくえん)」の縮小版。ガラスの代わりにアクリル樹脂を使い、新素材にも挑戦した印象の心意気が偲ばれます。
<展示室>
随所にスロープが設けられ、車椅子や足の不自由な方でも無理なく館内を巡ることができます。常設展にこだわらず、年に数回テーマ性のある展覧会が開催されています。
展示室。2024年開催の展覧会の様子。
<椅子>
館内や庭園に置かれている不思議なかたちをした椅子は、鑑賞に疲れたら休んでくださいという印象の心づかいが込められたもの。すべて印象のデザインで、どれも自由に座れます。
庭園に置かれた椅子
2階ホールの椅子
<インテリア>
館内に設置された案内板やドアノブ、ライトなどの室内装飾品にも注目!
扉の取手
案内板
<サロン>
作品のほか、印象愛用の絵筆や絵皿などが展示され、大きな窓からは比叡山や大文字山など東山の峰々が望め、眼下には印象が暮らした邸宅を見ることができます。
サロン
サロンからの展望
<ミュージアムショップ>
館内のドアノブのデザインをモチーフにしたマスキングテープやポストカードなどオリジナルミュージアムグッズが揃うほか、印象の作品「蒐核」をイメージした羊羹「光る窓」も販売。白あんベースのマイルドな和菓子です。
羊羹「光る窓」(写真左)、扉の取手をモチーフにした缶バッジ(写真右)
ポストカードも豊富
3月30日まで京都きものパスポートを呈示すれば入館無料。企画展「歴史画パラダイス」を鑑賞しよう!
印象は生涯にわたり数多くの歴史人物画を描いています。1月21日からスタートする企画展「歴史画パラダイス」では、所蔵品の中から法然上人関連の作品や大正時代の代表作「維摩」、戦後第一作となる「太子降誕」、絶筆の「善導大師」など、歴史人物を題材にした作品を中心に展示。鑑賞にあわせて金閣寺や龍安寺を訪れてみるのもおすすめです。
「歴史画パラダイス」チラシ
京都府立堂本印象美術館 企画展「歴史画パラダイス」
- 会期/2025年1月21日(火)~3月30日(日)
- 時間/9:30~17:00(最終入館16:30)
- 休館日/月曜日(祝日の場合は翌日休館)
- 入館料/一般510円、高大生400円、小中生200円(きものパスポート呈示で無料。詳しくはこちら)
- アクセス/京都市バス12、15、50、51、55、59系統「立命館大学前」停下車すぐ。またはJRバス高雄・京北線「立命館大学前経由周山」行きで「立命館大学前」停下車
お問い合わせ/TEL:075-463-0007
公式サイト http://insho-domoto.com/
Instagram https://www.instagram.com/domoto_insho/