教えて! きものインスタグラマーさん 和装を自由に楽しむコツ -後編-

2025.01.06

前回に引き続き、1万人以上のフォロワー数をもつ人気のきものインスタグラマーで、京都で着付け師やモデルなど多彩に活躍されている“あやみん”こと髙田彩美さんにインタビューしました。とかく、堅苦しいイメージがつきまとう和装を自由に楽しむコツや、おすすめの装いなどについて、インスタグラマーならではの視点でざっくばらんに語っていただきました。

前編を読みたい方はこちら

 

 

スタイリッシュで暖かい和洋ミックススタイル

フォーマルな振袖や訪問着、カジュアルな小紋などもよく着ますが、2022年くらいから和装に洋物の帽子や靴などを取り合わせた和洋ミックスコーディネートの写真もInstagramでよく発信しています。

最初はレースを合わせるなどして大正ロマン風にしないといけないかもとか、和装からかけ離れてしまうのでは、と思っていましたが、始めてみたらとてもカンタン。ただ帽子と靴を変えるだけで雰囲気が一変します。大きめのアクセサリーもアクセントになるのでおすすめです。

 

羽田空港での和洋ミックスコーデの写真。

 

和洋ミックスコーデを始めたきっかけは防寒でした。ご存じのとおり京都は底冷えです。私は寒がりなので真冬に草履を履くのが辛くて、代わりに皮のハイカットブーツを履いたことが最初でした。そのうちファーがついた手袋をしたり、きものの下に薄手のタートルネックセーターを着たり、髪の毛はおろしていた方が暖かいですから、そのままにしてニット帽を被ってみたり。

本来のきものの良さを残しつつ、暖かくてかわいい、しかもおしゃれに見える。コーディネートも伝統的な和装とは違った面白さがあって、装いに新しい楽しさが加わりました。

 

きもので国際線に乗ってモルディブへ。

 

京都は古い建物が多い街ですからきもの姿が風景に溶け込みますが、現代的な建物の多い都市部では浮いてしまうので、きものを着て歩くのが恥ずかしいと聞くこともあります。そういう場所では和洋ミックスコーデのほうがマッチするかもしれませんね。

以前、和洋ミックススタイルで空港へ行った際のInstagram投稿は多くの反響をいただきました。現代的な建物と飛行機を背景に、和と洋を組み合わせた装いが良かったんじゃないでしょうか。頑張りすぎていないコーディネートも共感いただいたのかもしれません。

 

 

きもの姿は、きもの好きを呼ぶ

ちょっと変わった着方をすると「きもの警察」に何か言われそう、と思う人もいるかもしれませんね。私も普段、きもの姿で街を歩いていると上から下までジーッと見られることがあります。でもそれは興味をもっていただいているだけなんだと思います。私も和装の方を見かけたら、じっくり見たいですもん(笑)。ステキなコーディネートの方を見ると嬉しくなりますし、どんな取り合わせなのか、小物は何を使っているのか気になります。きもの好きの性(さが)なのかもしれません。

ある時、ハロウィンをテーマに大きなつばの帽子をかぶって、足元はブーツ。魔女のようなでコーディネートで駅のホームを歩いていたら、後ろから女性が走ってきて「ちょっと、あなた!」って呼び止められました。何か言われるのかなと思って身構えていたら、「そのコーディネート、素敵ね!!」って、わざわざ追いかけてきて言ってくださったのには驚きましたが、とても嬉しかったですね。周囲でも「きもの警察」のことより褒められたというエピソードをよく聞きます。

 

ご主人との出会いもきもの。「きもの文化検定」のパーティがきっかけで意気投合しました。

 

きものが好き、あるいはきものに興味があるということだけで、人と人との距離ってグッと縮まるような気がします。私もこのお仕事をはじめて4年ほどですが、たくさんのきもの好きさんと出会い、ご縁が広がりました。きものの不思議なチカラだと思います。

ですから、きものを愛すればこそ伝統やルールに過度に縛られず、相手に押し付けず。きものを楽しむ気持ちをそれぞれが認め合い尊重することが大事と思います。

きものだって洋服だって、それぞれ同じ“着るもの”なんですから、ジャンルの違いで壁を作らず、シンプルに「ステキ」「かわいい」といった感覚を大事に、和洋ミックスを楽しんでほしいです。

もちろん冠婚葬祭などにおける装いのルール、TPOの基本は押さえなければいけませんが、普段着であれば着たいものを着れば良いんです。ネット上の「きもの警察」話を恐れなくてもいいのではないでしょうか。

 

 

きもののことなら気軽に聞いてください

Instagramで日々発信していると、和装に関する多くの相談をいただきます。「ここのシワはどうやってとったらいいですか?」「振袖をカジュアルに着るのってどう思いますか」など。どれも正解と言えるもののないグレーゾーンのようなお悩みです。時に一緒に悩むこともありますが、その人の「着たい」という想いを大事にしながら一つひとつアドバイスさせていただいています。

きものに興味はあるけれど誰に聞いたらいいのかわからない、着方もよくわからない。1回だけのきものレンタルで満足、という若い人が多いなかで、和装について気軽に質問できるSNSはとても良いツールです。

 

エメラルド美容室さんでヘアセット。きもの周りのことも発信。

 

和装はどの時代にも寄り添っていけると思っています。多少のトレンドはあるにしても基本の形は変わらない。おしゃれでかわいくて、和洋ミックススタイルのように応用性もある。そんな魅力的な衣装だからこそ、もっと多くの人にきものを着てもらえるように私も何か力になりたいと思っています。

その第一歩がInstagramです。私のインスタを見た人が、「私にもできるかも」「私も着てみたい」と思ってもらえるよう、これからもコツコツ発信していきます。もちろん私自身も思いっきりきものを楽しみながら。

 


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Instagram @ayamin_t_kimono

YouTube「きもの好き夫婦チャンネル」

取材・writing/五島 望(京都きものパスポート事務局/ウーム総合企画事務所)