紬織の重要無形文化財保持者(人間国宝)で、随筆家としても知られる染織作家・志村ふくみ氏の特別展「志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋―」が細見美術館(左京区)で開催されています。
植物由来の染料で絹糸を染め、仕立てられる志村氏の織物は、国内外で高い評価を受け、多くの人々を魅了してきました。
同展は101歳となった今もなお自然や色彩への深いまなざしを持ち続けている志村氏の貴重な展覧会です。しかも会期中、きもの姿で来館すると観覧料が200円引きになります。
今回のコラムでは同展の魅力と、きもの割引について紹介します。

細見美術館の外観。最上階には茶室もある(画像提供:細見美術館)
70年の表現の軌跡が一堂に
京都駅から地下鉄、または市バスで約30分。平安神宮や京都伝統産業ミュージアム、ロームシアター京都など、文化施設が多い岡崎エリアの一角に細見美術館はあります。
同館は実業家で日本美術コレクターでもあった細見古香庵(ここうあん)などが蒐集したコレクションを中心に、多彩な企画展を定期開催する美術館です。

「JAKUCHU CAFÉ」の店内(画像提供:細見美術館)
中央部が吹き抜けになった地上3階、地下2階のモダンな建物で、最上階には数寄屋建築の名匠・中村外二の遺作として知られる茶室「古香庵」があります。
また、地下2階にはオリジナルグッズや美術関連の書籍などを扱う「ARTCUBE SHOP」、雨の日でも開放的なオープンテラスでゆったりくつろげる「JAKUCHU CAFÉ」もあります。

茶室「古香庵」(不定休・予約制)(画像提供:細見美術館)

最上階からは東山が見える
その細見美術館で5月31日まで開催されているのが特別展「志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋―」です。
志村氏のライフワークともいえる『源氏物語』から想を得たきものをはじめ、石牟礼道子氏の原作による新作能「沖宮(おきのみや)」の装束、同展のために制作された新作など、およそ40件が展示されています。
(前期・後期で展示は入れ替わります)

豪華なラインナップ ※写真は特別な許可を得て掲載しています

《夢の浮橋》と《色糸の小箱『夢の浮橋』》
中でも見どころは、第1章「源氏物語の世界」に展示された新作《夢の浮橋》です。
約5年の構想を経て志村氏が監修したもので、肩から袖にかけては紅花などで染めた穏やかな緋色。袂(たもと)や裾(すそ)は紫根(しこん)や藍で染めた氏が大切にする色「紫」。全体にほどこされた軽やかな縞柄や藤の花のような意匠が、浮舟の可憐さと繊細な心模様を思わせます。
並びに展示された《色糸の小箱『夢の浮橋』》の、弾むような光沢の絹糸もあわせてじっくりとご覧いただきたい作品です。

石牟礼道子氏と志村氏の写真(中央奥)
第2章「沖宮の世界」では、作家・石牟礼道子氏の新作能「沖宮」で志村氏が監修した舞台装束6領などが展示されます。(前期3領、後期3領)

舞衣《紅扇》前期展示
中でも存在感を放っているのが「舞衣《紅扇》」です。
作中、干ばつに苦しむ村のために人柱となる少女・あやがまとう衣装で、全体が鮮やかな緋色。吸い込まれそうな奥行き、深淵さをも感じる衣です。
関西初公開。画像ではなく、ぜひその目で感じていただきたい作品です。
小さな布が織りなす「裂」の宇宙
第3章「志村ふくみの世界」では、創作過程で生まれた小さな裂(きれ)が主人公。

随筆《冬の湖》と、小裂で仕立てたかるた
長年織ってきたきものの残り布や小さな端切れを愛おしく思い、大切に保管してきた志村氏が、80代に入ってから創作したコラージュ作品が多く登場します。

きものの雛形
後期の展示には長年氏が愛着をもっていた高村光太郎の詩「五月のウナ電」をモチーフにした作品も登場します。

《五月のウナ電》 詩:高村光太郎 書・裂:志村ふくみ【後期展示】(画像提供:細見美術館)
「ウナ電」とは至急電報のことで、この詩は5月の夜空に現れたヘルクレス座が「青葉そろったか」「ケヤキは葉を出せ」などと万物の“再生”を促す内容。
「人間に構うな」という締めくくりに着目した志村氏は、この詩は人間の慢心に対する警告と受け止め、東日本大震災後の福島第一原発事故にも重ね合わせたといいます。
木漏れ日のような、きらきらとした明るい色彩が印象的な作品ですが、「警告」と思って改めて見れば、筆致のところどころに力強さを感じる作品です。4月14日からの後期展示にも期待が高まります。
きもの姿で行くと200円引きに
特別展「志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋―」に、きもの姿で行くと一般観覧料2,000円が1,800円に割引されます。学生も1,500円が1,300円になるので大変お得です。
<注意>
- きもの姿が対象です。
- 他の優待との併用はできません。
- ご本人様のみ対象となります。
細見美術館の【きもの特典】はこちら
近くにある京都国立近代美術館や、京都伝統産業ミュージアムにも「きもの特典」があります。細見美術館とあわせて、春の美術館めぐりに出かけてみてはいかがでしょうか。
便利な「きもの特典MAP」をご利用ください。

展覧会名:特別展「志村ふくみ 百一寿 ―夢の浮橋―」
会期:2026年3月3日(火)~5月31日(日)
前期 3月3日(火)~4月12日(日)
後期 4月14日(火)~5月31日(日)
開館時間: 午前10時~午後5時
休館日:毎週月曜日(ただし、5月4日は開館)、5月7日(木)
入館料:一般 2,000円 学生 1,500円(※きもの姿の方は200円引き)
Web:https://www.emuseum.or.jp
Instagram:細見美術館 @hosomi.museum
X:細見美術館@HosomiMuseum
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