きもの姿でアートを楽しもう! 新しくなった泉屋博古館の見どころと「きもの特典」の紹介

2025.05.20

京都市内の北東、五山送り火の「大文字」で有名な如意ヶ嶽(にょいがたけ)ふもとにある泉屋博古館(せんおくはくこかん)は、住友家が収集した3,500件以上にもおよぶ美術品等の保存・研究・公開活動を行う美術館です。

 

約1年半の改修工事を経て2025年4月26日にリニューアルオープンし、きもの姿の方がお得に入館できる「京都きものパスポート」特典の提供も始まりました。今回は、新しくなった泉屋博古館の見どころや、和装が似合うおすすめのフォトスポットなどについて紹介します。

 

▶︎きもの姿で泉屋博古館へ行き
スマホで「京都きものパスポート」を見せると入館料が割引になります。

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豊かな自然環境との調和を意識したモダニズム建築の1号館。

 

 

泉屋博古館の見どころ。“かわいい”が潜む青銅器コレクション

大坂を拠点に銅の製錬業を営んでいた豪商・住友家が収集した、“住友コレクション”と呼ばれる美術品は、中国・日本書画、西洋絵画、近代陶磁器、茶道具、文房具など幅広い分野にわたりますが、中でも中核をなすのが古代中国の青銅器です。

 

青銅器館の入り口。

 

 

青銅器というと「なんだか難しそう」と思う人もいるかもしれませんが、同館が所蔵する500以上の青銅器コレクションの中には、私たちに馴染みのある動物を模したものもあり「愛嬌があってかわいい」というファンも多いのです。

 

「虎卣(こゆう)」。世界に2つあるうちの1つが泉屋博古館に。

 

 

中でも今から約3, 000年前につくられた「虎卣(こゆう)」は必見の1つです。大きな虎が人を抱えているような形で、主にお酒や香草の煮汁を入れていた器と言われています。高さは35.7cmほど。

 

よく見ると虎が大きな口を開け、今にも人の頭を丸呑みにしようとする姿ですが、抱えられている人は穏やかな面持ち。鬼気迫る境遇とキョトンとした表情とのギャップがコミカルにさえ見える作品ですが、一説には虎の姿をした神が人間を守る様子と解釈されているとか。いにしえの人がこれでお酒を嗜んでいたと想像すると、また興味は広がります。

 

フクロウ・ミミズクの類を表した酒器「鴟梟尊(しきょうそん)」。

 

 

造形的に優れているだけでなく貴重な歴史史料としても高い価値をもつ青銅器コレクションは、1号館のブロンズギャラリー内で、4部屋にわたって公開されています。

 

同じ用途の青銅器をまとめて見せる大型のガラスケースも新登場。

 

 

今回のリニューアル工事を機に照明やガラスケースも新調され、以前よりも見やすくなったほか、一角にはその種類をわかりやすく解説するパネルや動画コーナーも設けられ、多角的に青銅器への理解が深められるようになりました。

 

「泉屋博古」の扁額。揮毫は西園寺公望。

 

 

ちなみに“泉屋博古”(せんおくはくこ)とは、江戸期に住友家が使用していた屋号「泉屋(いずみや)」と、中国・北宋時代に皇帝の命で制作された青銅器の図録『博古図(はくこず)』に由来しています。

 

ブロンズギャラリー入り口に掲げられた扁額「泉屋博古」は、住友家15代当主・住友友純(ともいと)の実兄で政治家の西園寺公望(さいおんじきんもち)の揮毫によるもの。こちらも注目です。

 

 

建物にも息づく住友家のおもてなしの心。きもの姿が似合うフォトスポットも

泉屋博古館が立つ地は、もともと住友家別邸の一角でした。1970年(昭和45年)の大阪万博開催を機に来賓をお迎えする施設として現在の1号館が竣工し、その15年後には北側に2号館が完成しました。

現在は1号館で青銅器の展示を、2号館ではその他の美術品の企画展を行なっています。

 

工事前(上)と工事後(下)。美しい八角形の吹き抜けに戻りました。

 

 

1号館は風光明媚な東山エリアの景観を損なわないように、また“住友家ゆかりの地”を意識して屋根に銅葺きを採用したといいます。外観はコンクリートやガラスを多用したシンプルな趣ですが、内観は高低差を活かして、らせん状に展示室が配されています。

 

そのモダンさ、優美なデザインをより活かすために、今回の改修工事では1号館のらせん階段に設置してあったエレベーターを移設し、すっきりとした眺めの吹き抜けに戻されました。このらせん階段はきもの姿が映えるフォトスポット。1号館内は静止画の撮影はできるので、おすすめです。

※動画撮影はできません。フラッシュ・三脚を使用した静止画撮影も不可です。写真撮影の際は他のお客様が映り込まないようご配慮ください。2号館は撮影できません。

 

右に1号館、左に2号館が立つ中庭。奥に東山が見える。

 

 

また、1号館と2号館の間には東山を借景とする中庭があり、奥には五山送り火で有名な大文字の一部も見えます。庭師・11代目小川治兵衞が作庭したもので、中央には住友家の屋号を彷彿とさせる井桁型の井戸があり、今も清水が湛えられているとか。東山から吹き降りてくる風や、イソヒヨドリのさえずりも心地よく、日々の喧騒を忘れさせてくれる清々しい庭園です。

 

「饕餮(とうてつ)の間」の一角には無料のドリンクサーバーもある。

 

 

館内には各所にベンチが設けられていますが、中でも1号館の「饕餮(とうてつ)の間」はおすすめの休憩ポイント。中庭の緑がのぞめるガラス張りの開放的なつくりで、ゆったりと腰掛けられるソファがあるほか、無料のドリンクサーバーで温かいお茶なども飲むことができます。鑑賞後の余韻を語り合ったり、写真を撮ったり、思い思いの過ごし方のできるくつろぎの空間です。

 

 

集めて楽しい「泉屋八景」カード。待望のミュージアムグッズも登場!

1号館では青銅器を展示し、2号館では企画展が開催される泉屋博古館ですが、そのほかに今回、特に注目のポイントが2つあります。

 

「泉屋八景」カード、8枚集めて記念に。配布は2025年8月3日まで。

 

 

1つは「泉屋八景(せんおくはっけい)」です。
前記した中庭や、「饕餮の間」を含む泉屋博古館の美しい景観8箇所を「泉屋八景」と題して小さなカードで紹介するものです。

 

8箇所のカードスタンドを探しながら巡るのも楽しい。

 

 

館内8箇所の美観スポットにカードスタンドが設置され、それぞれの景観写真と簡単な紹介文が掲載された7.5cm四方のカードを自由に持ち帰ることができるという、収集欲をくすぐる企画。

 

カードを8枚集めて記念に、あるいはちょっとしたお土産にできるよう、組み立て式の紙製カード入れが無料配布されているのも心憎いサービスです。

※泉屋八景カードの配布は2025年8月3日まで

 

青銅器をリアルに再現したポーチ(左)とクッション(右)はフェリシモ「ミュージアム部」で販売。

 

 

もう1つは多彩なミュージアムグッズです。
美術品の美しさを再現したミニチュアのレプリカをはじめ、青銅器のデザインを大胆にあしらった手拭い、さらには人気の青銅器そのものをフェリシモ「ミュージアム部」がクッションやポーチにしたユニークなアイテムが登場するなど、泉屋博古館ならではのグッズが新たに誕生しました。

★フェリシモ「ミュージアム部」の詳細はこちら
中国青銅器に見られる不思議な魅力の動物のグッズ4点が泉屋博古館とのコラボでフェリシモ「ミュージアム部」から新登場

 

「リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち」の様子。

 

 

現在、泉屋博古館ではリニューアルオープンを記念して、住友家に伝わる美術品を精選した「帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち」展などが開催されています。きものを着て同館へ行き、スマートフォンで「京都きものパスポート」を受付で見せると、一般1,000円の入館料が団体料金800円で入館できます。

 

多彩な企画展とともに定期的に講演会(予約制)やガイドツアーなどのイベントも行われていますので、詳しくは泉屋博古館のWebサイトまたはSNSをチェックしてみてください。

 

泉屋博古館の「きもの特典」はこちら
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リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち
会期/2025年4月26日(土)~6月8日(日)

ブロンズギャラリー 中国青銅器の時代
会期/2025年4月26日(土)~8月17日(日)

リニューアル記念名品展Ⅱ 続・帰ってきた泉屋博古館 近代の美術、もうひとつの在り方
会期/2025年6月21日(土)~8月3日(日)

 

上記いずれも

時間/10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日/月曜日(5月5日、7月21日、8月11日は開館)、5月7日(水)、7月22日(火)、8月12日(火)
入館料/一般1,000円、学生600円
公式サイト https://sen-oku.or.jp/kyoto/
Instagram https://www.instagram.com/senokuhakukokanmuseum/
X https://x.com/SenOkuKyoto

 

取材・writing・撮影/五島 望(京都きものパスポート事務局/ウーム総合企画事務所)