ずいぶん昔に買ったきもの、母親から譲り受けたきもの、なかなか着る機会がなくてタンスで熟睡…。
思い当たりませんか? そんなきものを着てみよう、そのきもの姿でお茶会も体験してみよう! というイベント「きものでひなまつり」が2024年3月3日、京都御所の西にある「有斐斎弘道館(ゆうひさいこうどうかん)」で催されました。今回はそのレポートをお届けいたします。
主催した京都染織青年団体協議会の皆さん
「きものでひなまつり」は、きものを着てみたいと思う初心者をはじめ、なかなかきものを着る機会がない、茶道を始めとする日本の文化を体験してみたいという方を対象にした、着付けとお茶会体験、カメラマンによる撮影がセットになったイベント。主催は京都染織青年団体協議会で、今回で3回目の実施となりました。
会場となった弘道館の入り口(撮影:水谷秀人)
参加条件はとにかくタンスに眠るきものや帯を持参して着ること。
素材や柄、訪問着、小紋といったきものの格、つまり「きまりごと」といわれるものは一切気にしなくてよく、会場でプロの着付け師さんが速やかにしかも美しく着せてくれ、着くずれの心配も不要という大変気楽な会です。
「タンスの肥やしになっているきものを着てもらおうというのが一番の目的です。堅苦しいというイメージの“きもの”と“茶道”をあえてくっつけて、その中にある楽しみや魅力を少しでも感じていただけたら」と話すのは京都染織青年団体協議会の会長、野瀬守弘さん(啓明商事(株)・代表取締役社長)。
2023年11月に京都府庁で実施された「男のきもの着付け教室」でもゲストでご協力いただきました。
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雛人形も飾られていました
会には総勢24名の男女が参加されました。参加者は持参のきもので着付けを済ませ、庭を通って茶室へ。
皆川淇園はおよそ3000人の門弟をもつ学者でした(撮影:水谷秀人)
会場となった「有斐斎弘道館(ゆうひさいこうどうかん)」は、江戸中期、京都を代表する儒学者・皆川淇園(みながわきえん)が創立した学問所でした。2009年、同地にマンション建設計画が持ち上がった際、有志が保存の呼びかけに奔走し、今の姿を留めることとなりました。
かわいい猫が描かれた木箱をお茶道具に(撮影:水谷秀人)
会場は館内にある6畳ほどの茶室。同館の太田理事の見立てで、ひなまつりにちなんでハート型や、うさぎが描かれた茶碗など、女児のまつりにふさわしく“かわいい”趣向が凝らされた茶道具が次々と登場。道具の由来や作者との縁など、さまざまなエピソードも飛び出し、笑い声が絶えないあっという間の30分でした。
ハート型の二月堂の水差。イースターに見立てた卵型の蓋置も。
お茶会終了後は庭でカメラマンによる撮影、そして解散。「このまま、きもの姿でランチに行きます!」という女性2人組の晴れやかな表情がとても印象的でした。
美しいきもの姿に大変身
イベントを主催した京都染織青年団体協議会は、和装産業の連携と振興を目的に1976(昭和51)年に結成。生産、加工、流通・小売まで、さまざまな和装分野に携わる事業所が加盟し、互いに情報を交換し合い、切磋琢磨しながら業界の成長を図ろうという組織です。
受付もきもの姿の男性
「青年団体」というだけあって、若手の男性が多く所属されているのも特徴の一つ。今回の「きものでひなまつり」では、それぞれに忙しく働いておられましたが、皆さんきもの姿がとても素敵でした。
同会の亀井彬さん((株)ゑり善代表取締役社長)は今後について、「これまでの経験や実績を糧に、仲間を増やしながら、今回のようなお茶会イベントや講演会など、きものの良さを感じていただけるような企画を実施していきたいですね」と語ります。
京都染織青年団体協議会の詳しい概要やイベント情報はWebサイトをご覧ください。京都きものパスポート事務局でも引き続き京都染織青年団体協議会に注目しながら、情報を発信していきたいと思います。
京都染織青年団体協議会 https://kyoto-senshoku.jp
有斐斎弘道館 https://kodo-kan.com